愛を捧ぐフール【完】
 セウェルス伯爵が目配せしてきたので、膝を少し折って礼をした。


「クラリーチェ・レオーネと申します」

「知ってるとは思うが……第一王子のファウストだ。よろしくね、クラリーチェ嬢」


 仕草もほぼ変わらないし、声も同じ、見せる笑顔もそっくりだ。それなのにクリストフォロス様の生まれ変わりであるファウスト様ではなく、全然別人と話しているような感覚になる。
 不思議な気持ちを抱えながら、私は内心とても困惑していた。


「へぇ、婚約者殿は随分と若いんだな。セウェルス伯爵」

「これはこれはアルフィオ殿下。お久しぶりです」


 まだ幼さの残る気の強そうな少年が話の輪の中に入ってくる。短い金髪にファウスト様と同じ色の碧眼は切れ長だったが、母親違いでも似ていた。
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