愛を捧ぐフール【完】
 アルフィオは格好が悪いと大層不満そうだったが、それを理由に国王である父上に誰にも言わないでおいてくれと頼んだら快諾してくれたらしい。まさかグローリア王妃にまで言っていないとは、思っていなかったけれど。
 難しい顔で短い顎髭あごひげを撫でつつ、父上は横目で僕を見た。


「ファウスト、行ってくれるか?」

「御意」


 礼をする僕だったが、王妃を含む貴族達は騒然とする。


「ちょっと待って下さい!アルフィオが怪我をしたってどういうことですの?!」

「……まあ、そう突っかかるな。少し油断したみたいでな。すぐ治るものだが、大事をとってという事だ」


 父上の様子に他の貴族達の騒ぎは収まったが、グローリア王妃だけは顔色を真っ青に染めていた。自分の子供が怪我をしているのだ。やはり母親としては心配だろう。


「反乱鎮圧の指揮は王太子ファウストに任せる。将軍のパオロ・クラウディウスは補佐に。皆もそのつもりで」


 父上の命令にその場にいた全員が礼をとる。僕も父上に礼をとって、グローリア王妃の弟である将軍のパウロ・クラウディウスに声を掛けた。


「僕の補佐官としてよろしく頼むよ。なにせ出兵は初めてだからね」

「はっ。誠心誠意務めさせていただきます」
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