愛を捧ぐフール【完】
 そう言ったビアンカはどこか晴れ晴れとした、それでも瞳からは涙を流しながら微笑む。


「クリストフォロス様がおかしいと判ってから、ありとあらゆる宮廷医に見せたわ。でも彼はどんどん壊れていった。貴族達は必死に隠したわ。クリストフォロス様を傀儡(くぐつ)にして」


 胸を圧迫されたような感覚が襲う。息が酷くしずらい。
 ねぇ、私、クリストフォロス様に幸せになってもらいたかったのに。


「……最後は自殺だったわ。いつも懐に持ち歩いている短剣で自身を傷付けて。貴方が住んでいた部屋で亡くなられたの。ーーペルディッカス……今のアウレリウス公爵を道連れにして」
「アウレリウス公爵が、ペルディッカスだったの……?」
「ええ」


 ペルディッカスがアウレリウス公爵だったなんて。何故、そんなに私がアウレリウス公爵に恨まれていた理由がわかった。
 私が邪魔だったのかーー。


 そしてクリストフォロス様はどうして、そんな結末を迎えてしまったの?


「そうしてアルガイオ王族の直系はいなくなったの。わたくしの息子もクリストフォロス様がお亡くなりになられる前に病で亡くなってしまった……クリストフォロス様が傀儡になってから、アルガイオの支配権を競って沢山の貴族が争った。そうして、アルガイオは滅びの道を辿ってしまったの」


 クリストフォロス様は誰よりも国王に相応しい才能を持っていた。
 でも、誰よりも国王に向いていなかったのかもしれない。
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