愛を捧ぐフール【完】
 絵姿で見たわたくしの将来の夫になる人は、大層整った顔立ちをしていた。ペルディッカス様が言っていた通りだと、顔立ちも良く、穏やかでいい人なのだという。


 ペルディッカス様はアルガイオの国王クリストフォロス様の事を、後世に名前の残る賢王となるだろうと褒め称えていた。そして、自分はクリストフォロス様の側でその治世を見るのだと。


 もう既に王妃がいると聞いてお父様はあまり良くない顔をしていたけれど、ペルディッカス様からと噂で伝え聞いた聞いたクリストフォロス様の人柄についてはそれなりに安心しているようだった。


 お父様に愛されていなかった訳ではない。愛されていたから、お父様はわたくしを国内に嫁がせようとしていた位だった。


 わたくしの花嫁行列は一国の王女らしく豪華で派手なものだった。そうして入ったアルガイオの王城の後宮で、わたくしは初めて夫となる人と出会ったのだ。


「はじめまして、テレンティア姫。私はアルガイオの国王クリストフォロスだ。みんなは私の事を陛下と呼ぶから、君もそのように」

「はい。よろしくお願い致します」


 薄氷色の瞳と長い銀髪は色からして冷たく見えそうだったが、彼の醸し出す雰囲気で不思議とそうは見えない。絵姿そのまま……いや、絵姿以上の美青年がわたくしの夫となる人だった。
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