愛を捧ぐフール【完】
 元々美姫と名高かったお母様そっくりのわたくしの容姿は、誰の目から見ても美しいと称えられてきた。最初の方からわたくしの部屋に毎晩通う陛下に、わたくしの魅力が伝わったのかと内心喜んでいた。


 隣国の王女とは言え、粗末な扱いを受けないという保証はどこにもない。けれど、不安だらけで嫁いで来たわたくしを陛下は気遣って下さり、優秀な侍女も付けてくれている。


 それだけで、わたくしは陛下に心惹かれていったのだ。そもそも夫なのだ。心惹かれても後ろめたさを感じる事などない。


 一度だけ目にした王妃は、金髪に桃色の丸い瞳を持つ可愛らしい人だったけれど、女性というよりまだ少女のようだった。
 それならわたくしの元に夜来るのも分かる。


 だけれど、一度も一晩中を共にしたことはなかった。
 毎晩毎晩やってくるのに、必ず夜中には抜けて王妃の元へ帰っていく。


 どうして?わたくしは彼の寵愛を受けている筈なのに。


 気になって一度、こっそりと王妃と散歩をしていた陛下を見た事がある。そして、わたくしは後悔をした。
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