愛を捧ぐフール【完】
信頼はされていない。
自分でも知っていた。わたくしだって信頼していない。ただ、お互い付き合いの年数が長いだけの人だから。
「ビアンカ。お前がよく働いてくれているのは知っている。だがな、私は心配なんだ」
「心配……ですか」
鋭い目付きでアウレリウス公爵は言った。
オールバックにした金髪。目つきの悪い紅色の眼。
彼を過去から知るわたくしはこの人の事を優秀な人だと、ことある毎に思っている。
もし立場が立場なら、一国の王にすらなれる器だ。
優秀さや情勢を把握するのに長けていることは勿論、国王として必要な冷酷さや野心も持ち合わせている。
ただ、彼が持っていた野心は一つだけだった。
ーーこの王国の第一王子、ファウスト殿下を立派な国王にすること。
ファウスト殿下の優秀さは昔から有名だ。第二王子も優秀だと言われているが、ファウスト殿下は比べ物にならない。
だが、それでもファウスト殿下は自身の優秀さを隠しているのだろうと思う。
彼の前世を知る者ならば、あれは彼の能力の一端に過ぎないと実感する。