愛を捧ぐフール【完】
 ファウスト殿下の前世、国王クリストフォロスの代はアルガイオの最盛期だった。
 王子時代から政治に参加し、アルガイオの公衆衛生、労働改革、農地改革、市場経済や医療技術、建築技術発展への投資等を行い、アルガイオの文化が一気に進んだ時代であった。


 国民が医療を受ける際、大金を払わずに済むようにしたり、商人達の独断場だった市場をコントロールしたり、水路や橋を作り、水の安定供給と交通の活性化を図ったり。


 見た目も麗しいことも相まって、高いカリスマ性、リーダーシップ、提案力も持ち合わせいたものだったから、国民からの支持も高く、周囲の上流階級の人々も全員一致で彼に従っていた。


 このアウレリウス公爵もその一人である。


 彼はクリストフォロス国王に心酔していた。
 それは今世でも変わらない。


 若くして亡くなったクリストフォロス国王が賢王と呼ばれていた時代がどうしても忘れられず、ファウスト殿下にまた国王になってもらおうと願っている。


 だからそれに邪魔な人間は早々にどうにかしたいのだ。
 それは今世で血の繋がった自身の娘も例外ではない。
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