愛を捧ぐフール【完】
名前も違う。産まれも違う。家族も違う。容姿も違う。生きている時代も違う。
同じなのは、ずっと持ち続ける前世の記憶のみ。
一国の王女として、国王の側室として、テレンティアとして生きた人生はもう終わった。
わたくしにとっては全て過去の事だ。
だからわたくしは、ビアンカとして生きていく。
アウレリウス公爵とは関係ない。アウレリウス公爵に仕えている訳では無いただの侍女。だから、アウレリウス公爵に対して従う必要なんてない。
わたくしもアウレリウス公爵に一言告げてから退出する。向かう先は勿論、今世の主であるクラリーチェ様の元だ。
クラリーチェ様を軟禁する為に、わざわざ使っていなかった邸を使っているので、廊下の隅には埃が残っていたりする。妾の子供とは言え、貴族の令嬢を一人軟禁しているのだ。広まる危険性があるので、あまり侍女をこの邸に滞在させる訳にはいかない。
「わ……っ?!」
主の居る部屋のドアを開けると、ドアにくっ付いていたらしいクラリーチェ様が勢いよく飛び出してくる。
わたくしの身体に飛び込んできたクラリーチェ様は固まった後、目をさ迷わせながら、しどろもどろに口を開いた。
同じなのは、ずっと持ち続ける前世の記憶のみ。
一国の王女として、国王の側室として、テレンティアとして生きた人生はもう終わった。
わたくしにとっては全て過去の事だ。
だからわたくしは、ビアンカとして生きていく。
アウレリウス公爵とは関係ない。アウレリウス公爵に仕えている訳では無いただの侍女。だから、アウレリウス公爵に対して従う必要なんてない。
わたくしもアウレリウス公爵に一言告げてから退出する。向かう先は勿論、今世の主であるクラリーチェ様の元だ。
クラリーチェ様を軟禁する為に、わざわざ使っていなかった邸を使っているので、廊下の隅には埃が残っていたりする。妾の子供とは言え、貴族の令嬢を一人軟禁しているのだ。広まる危険性があるので、あまり侍女をこの邸に滞在させる訳にはいかない。
「わ……っ?!」
主の居る部屋のドアを開けると、ドアにくっ付いていたらしいクラリーチェ様が勢いよく飛び出してくる。
わたくしの身体に飛び込んできたクラリーチェ様は固まった後、目をさ迷わせながら、しどろもどろに口を開いた。