愛を捧ぐフール【完】
 それって王太子様だから?、なんてシストが問うものだから、さあ?性分かもね、と肩を竦めて答えた。


 アルガイオの国王だった頃。時代が良かったのもあるけれど、僕が慎重な性格で他国との争いよりも、平和的な関係を築く方を選んだ。それも賢王と呼ばれた理由の一つなのかもしれない。


「まあ、偵察部隊には目を光らせてもらっているし、ラウルの方にも頼んでるからね」


 ねえ?、と首だけ斜め後ろを向けると、控えていた彼は大きく頷いた。


「はい。反乱軍の方にも内通者は居ますし、今の所奇策を出すような軍師はおりません。戦いを知らぬ平民が集まっているような有様です。将軍の言う通り、数にものを言わせるような戦いでも問題はないかと」

「だね」


 まあ、何があっても別に問題はないけれど、と小声で続ける。知っているラウルとシストは何も言わなかった。


 ーー表舞台から第一王子が消えるのは、随分前から描いていたシナリオだったから。
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