愛を捧ぐフール【完】
 それを二人で見送り、さて、とファウスト様は私の方へとクルリと向き直った。
 ファウスト様は私と視線を合わせるように、高い背を屈める。私へ向ける彼の広い空のような瞳は、いつでも優しいのを知っている。


 反乱はどうなったのか、行方不明になったんじゃなかったのかとか、どうしてその様な格好をしているのかとか、聞きたい事は沢山あった。


 でも結局、出てきた言葉はたった一言だった。


「生きていて、よかった……!」


 彼の存在を確かめるように彼の頬に触れる。
 真っ白な肌に指を滑らせると、ファウスト様はくすぐったそうに私の手に自身の手のひらを重ねた。


「どうやら心配を掛けたようだね。僕は何ともないよ。大丈夫」


 苦笑した彼は本当に何もなさそうで、ひとまず私はほっと胸を撫で下ろす。
 ファウスト様と二人きりが不味いとか、そんな事は頭の中からなくなっていた。


 ただただ、会えた事が嬉しくて。


「君の方こそ大丈夫だったかい?軟禁されていた事は知っているよ」

「ええ。私は大丈夫です。乱暴な事はされなかったわ」

「そうか……」
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