愛を捧ぐフール【完】
 クスリと私が笑うと、ファウスト様は唇の端を下げた。


「またおとぎ話みたいになるのはなんか嫌だなあ……」

「イオアンナに言ってくださいよ」

「うーん。そうじゃなくて……、おとぎ話では主人公は絶対幸せになれるだろう?」

「ええ……」


 私が頷くと、ファウスト様は足元に視線を落とした。彼の碧眼が翳(かげ)る。

「その幸せが綺麗事だけじゃないって、沢山の何かを犠牲にして、何か1つに必死に縋って掴んだものだって、誰も知らない」

「クリストフォロス様……」


 声をかけると、ごめん、湿っぽくなっちゃったねとファウスト様は苦笑した。


「そういえば、フォティオス……サヴェリオとオリアーナ嬢が結婚するんだって」

「素敵!フォティオスお兄様とイオアンナはまた今世でも結婚するのね!」

「なんだかんだ、フォティオスはオリアーナ嬢の事を気にかけていたみたいだったしね」

「フォティオスお兄様、前世はイオアンナと子供が出来てしまったから結婚したとイオアンナが言っていたから、ちゃんとイオアンナの事好きみたいでよかったわ」

「そんな経緯で前世は結婚してたんだ……」
< 284 / 285 >

この作品をシェア

pagetop