愛を捧ぐフール【完】
 なんとも言えない顔をしたファウスト様は、そのまま微妙な面持ちで続ける。


「君の侍女だったビアンカ嬢は、オリアーナ嬢に引き取られた後、今はアルフィオの元で侍女として働いているんだって。そこですごい勢いで昇進しているみたい」

「そう……。あの人も今世は幸せになって欲しいと思うのだけれど」

「……そうだね」


 ファウスト様にはテレンティア様がビアンカだとは思わなかったらしい。ビアンカはファウスト様の部下のラウルの部下だったのだと。つまりファウスト様の直属部下ではないけれど、立場的には部下だったらしい。


 彼はなんとも言えない顔をして、そうかと呟いただけだった。クリストフォロス様も半ば無理矢理だったが、昔結婚した元妻だからだろうか。


「……クリストフォロス様は、これからアルフィオ様にずっとお願いされたら戻られるんですか?王都に」

「うーん、どうしようか……。でも……」


 ファウスト様にとってアルフィオ様は、可愛い弟なのだという。前世で兄弟のいなかった彼には新鮮なのだろう。身内として助けたい思いはあるらしい。


 ファウスト様は私の腰に手を回し、グッと自身の方へと引き寄せる。そして、私のおでことくっ付けて艶やかに微笑んだ。


「誰もが僕の事を女に溺れた愚か者と呼ぶだろう。事実その通りだ。前世(むかし)も今世(いま)も君に溺れている。



 ーーでも、前世は国の為に我慢したから、今世は我が儘に生きても……いいよね?」


 そう言った彼は、ゆっくりと私の唇にキスをした。
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