愛を捧ぐフール【完】
 サヴェリオは兄上の事を何故かだいぶ嫌っているから、 言っていいものかどうか悩んだが、埒が明かないので素直に打ち明けた。


「実はエヴァンジェリスタ・セウェルス伯爵とクラリーチェ・レオーネ男爵令嬢の婚約の事なのです」


 私の言葉に兄上は僅かに目をみはった。ほんの僅かな些細なものだったけれど、確かに兄上は動揺して顔を強ばらせていた。


「クラリーチェ、嬢の?そういえば、前に舞踏会であったご令嬢だったよね」

「ええ。実はサヴェリオがエヴァンジェリスタ・セウェルス伯爵とクラリーチェ嬢の婚約を破棄させたいらしくて……」


 何故、兄上は動揺しているのだろうかと疑問に思いながら私は事の経緯を説明する。


 すると納得したように、ほんの少しだけ顔を緩める。多分私が性格的に人をよく見ているので気付けた、そんな程度のものだったけれど。


「フィリウス侯爵家の嫡男がね……。クラリーチェ嬢に恋でもしたのかな?」

「さあ……、本人は違うと言っていますが、少し様子がおかしくて……」

「様子がおかしい?」
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