愛を捧ぐフール【完】
 私だって、流石に今回の件は難しいものがある事くらいは感じている。


 本音を言うと、エヴァンジェリスタ・セウェルス伯爵とクラリーチェ・レオーネ男爵令嬢の婚約に首を突っ込んでいい権利なんてない。


 だけれど、請け負ってしまった。


「サヴェリオが、今にも死んでしまいそうな位必死な顔をしていたんです」


 決して安請け合いではない。
 だけれど、今まで接してきて幼馴染みがあんな顔をした事は無かったのだ。


 それは、伝え聞く恋愛などという甘酸っぱいものでは無さそうだった。


 もっと、深くて恐ろしいもの。サヴェリオが初めてクラリーチェ嬢を見た時幽霊に遭遇したかのような、表情を浮かべていたから、恐怖に近いものなのかもしれない。


 初対面のクラリーチェ嬢に一体どんな感情を抱けるというのだろうか。


「そう……。だけど、フィリウス侯爵家の嫡男がクラリーチェ嬢をどんなに救いたいと思っていても、難しいんじゃないかな」

「兄上、第一王子派のセウェルス伯爵とレオーネ男爵をどうにかして説得出来ませんか?」

「どうやって?」
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