愛を捧ぐフール【完】
 ニコリ、と完璧な微笑みを浮かべて首を傾げる兄上に、私は言葉を詰まらせながら答える。


「第二王子である私が第一王子派の貴族にどうこうなんて言えません。……言う権利がない。だから、第一王子である兄上が、ご自身の派閥に一声かけて下さればなんとかなるかと……」


 相変わらず王国中に伝わる程の美しい美貌に笑みを浮かべ続ける兄上は、とても柔らかい声で残酷に告げた。


「国王になってしまえば第一王子派だの、第二王子派だのいうものなんて関係ない。誰かを贔屓し過ぎる事も、誰かに遠慮する事も出来ない。皆に等しく命令を下し、等しく役割を与え、等しく扱うんだよ」


 そこまで言って、兄上の笑みが寂しそうなものに変わった。


「アルフィオ。君はまだ甘すぎる。第二王子である君に出来なくて、第一王子であり王太子である僕に出来る事なんてそう多くはないんだよ」

「ですが……」

「クラリーチェ嬢の事については諦めた方がいい。君の為だ。下手に首を突っ込むと、何が出てくるか分からないよ」


 ーーそう、例えば僕みたいな愚か者がね。
 クスリ、と兄上の快晴の空のような瞳が曇る。私は違和感を覚えて眉を寄せた。


「兄上……」

「それに、クラリーチェ嬢はレオーネ男爵の愛人の娘なんだろう?それなら、セウェルス伯爵に嫁ぐのは彼女にとって玉の輿だし、社交界にも入れるんだよ?万々歳じゃないかな?」
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