愛を捧ぐフール【完】
 みんな知らない。私に子供が出来ない事を、クリストフォロス様が隠し通せと命令したから。
 だから、子供を作る為にテレンティア様の元に通わなければならないのは分かっている。


 けれど、分かっていても改めて言われるのは別でしょう?


「……テレンティア様から生まれた御子が男子ならば、きっとこの国と隣国を結ぶ橋渡し役となるでしょう?」

「ですが……」

「お兄様は私の元にクリストフォロス様が通われない事がとても不満ですか?」


 一瞬ハッとお兄様は碧い瞳を見開き、頷いた。


「当たり前です。エレオノラ王妃様が王妃様であっても、私には大事な妹でもあるのですから、蔑ろされたら父上も許しません」

「……そう。クリストフォロス様には大事にしてもらっております」

「そうですか……」


 お兄様は自分の意のままに進まない会話だったのだろうか、少しだけ息を吐いた。
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