愛を捧ぐフール【完】
「それならば何故、エレオノラ王妃様は思いつめたようなお顔をなさっているのですか?」

「思いつめたような……顔?」


 思わず手で自分の頬に触れる。お兄様に気を遣わせる程、そんなにも酷い顔をしていたのか?
 自分では分からないので、どうしようもない。


「ええ、エレオノラ王妃様。貴女がお辛いのであれば、父上から陛下に申し上げてもいいのです。テレンティア様は隣国の元王女様とはいえ、今では一側室でしかありません。陛下が王妃様を蔑ろになさっていい筈がありません」

「いいえ、いいえ……。いいのです。私は大事にされているわ」


 言える訳がない。こんなにクリストフォロス様から大事にされているのに、テレンティア様の元に通って欲しくないだなんて。


 王妃たる者が、たかがそれだけの我が儘を言ってはいけない。我慢しなければいけない。


 知らないのだ。お父様もお兄様も。
 国王は沢山の妻を持つ。それは尊い国王の血が途絶えない為にだ。
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