愛を捧ぐフール【完】
 一夫多妻が当たり前の場所で夫が他の女性の元へ通うのが嫌だなんて、言ってはいけない、言える訳がない。


 私はとても大事にされている。
 一緒にいるだけで、クリストフォロス様から伝わってくる。


 そして、私もクリストフォロス様を愛している。


 それだけで、充分よ。


 お兄様が帰った後、自室でこっそりと鏡で自分の顔を映してみた。
 いつか見た、疲れきって少し年老いてしまったかのような女がそこにはいた。


「……これでは、お兄様に心配されるのも納得だわ」


 隈は勿論、身体も女らしいとは程遠く、痩せ細ってしまっている。手も華奢を通り越して、怖いくらいに細かった。
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