愛を捧ぐフール【完】
 少し拗ねたように口を尖らせるテレンティア様を、直視する事が出来なかった。手が震える。こんなに生々しくそんな話を聞かされることになるなんて。


 彼女を睨んでしまいそうな自分が、怖かった。


「エレオノラ様、どうかなさいましたか?」


 こてんと首を傾げたテレンティア様が不思議そうに私の名前を呼ぶ。
 私は折れそうになる心に気付かなかったフリをして、微笑みを作った。


「何もありませんわ。そうですね……私からクリストフォロス様にも少し言っておきますわね」

「ありがとうございます!エレオノラ様」




 嬉しそうにニコニコ笑うテレンティア様が懐妊したと聞かされたのは、それからすぐ後の事だった。


 お茶会の時に予感はあったのだ。
 テレンティア様が気怠そうにしていたのも、茶菓子に気分を悪くしていたのも。全部そのせいだろう。
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