それなら私が女王になります! ~辺境に飛ばされた貴族令嬢は3回のキスで奇跡を起こす~
――ねえねえ、キスってどんな味がするんだろうね!?
かつて親友のミリアとそんなおしゃべりをしたことを思い出した。
そして今、私はキスをしている。
しかもその相手があのジェイ・ターナー。
――さぞかし甘い味がしているんでしょうね!
そうミリアは頬を膨らませるかもしれない。
だけど、実際には味わう余裕なんて微塵もなかった。
「ん……」
彼の短いうめき声が鼓膜を震わせる。
でも声は必要ない。
だって重ねた唇を通じて、彼の心の奥へと入っていけたのだから――。
――やめてくれ!
なおも彼は私を拒んできた。
とても暗くて、冷たい。
それでも確かに感じる小さな光に向かって突き進んでいった。
(奥へ。奥へ)
そうしてついに小さな扉の前までやってきた。
かすかな光が漏れ出ている。
その扉を私は強引にこじ開けた。
同時にあふれ出す眩しい彗星。
(これだ! これが本当のジェイ様だ! 『彗星の無双軍師』ジェイ・ターナー様だ!)
彗星は私を飲み込んでいく――。