それなら私が女王になります! ~辺境に飛ばされた貴族令嬢は3回のキスで奇跡を起こす~
………
……
――僕たちが一緒になれば、きっとクローディア姉さんもお喜びになるはずです。それに顔を合わせる前から、あなたに憧れを抱いておりました。そして今、こうして実際にお話しして確信しました。あなたは素晴らしい女性であることを。だから僕が成人した後、僕のお嫁さんになって欲しいのです。
「うふふふふ……!」
クローディア様のお墓参りを終えて家に戻ってから、ずーっと笑いが抑えきれない。
だって第三皇子様から求婚されたんだから。
浮かれてしまうのは仕方ないと思うの。
しかも見た目はクローディア様そっくり。将来は美青年になること間違いなし。
そのうえ、性格は穏やかで優しいとくれば、もう言うことなしだわ。
――でも突然こんなことを言われても困りますよね。だから僕が戦場から戻ってきたらお返事をください。
ジュスティーノ殿下が戦場に戻ってくるのは1ヶ月先だとパパが教えてくれた。
そしてパパは同時にこう言ってたわ。
――ま、まあ。殿下がそうおっしゃるなら仕方ない……。あとはお前自身で決めなさい。
って。
だから殿下が帰ってくるまでにどう返事するか、しっかり考えておかなくちゃ。
でもちょっとでもジュスティーノ殿下のことを考えると、思わず顔がにやけちゃうのよね。
「うふふふ!」
そんな風に午後のひとときをバルコニーで紅茶とともに過ごしていると、弟のヘンリーがやってきた。
「なんで一人で笑ってるのさ!? 気持ち悪いなぁ」
ヘンリーの意地悪い挑発だ。
でも今の私には心地よい森のせせらぎのように聞こえる。
「あらっ? ヘンリーくん。ご機嫌うるわしゅう」
「うげぇ……。なんだよそれ……。その浮かれようからして、まさか誰かに愛の告白をされたとか?」
ズバリ言い当てられて、表情が固まり顔が熱くなってしまった。
ヘンリーは白い目をして続けた。
「マジかよ……。図星かよ……。こいつは驚いた。いったい相手は誰なんだ? ジェイ大佐か?」
「ば、馬鹿言わないの! ジェイ様なわけないでしょ! か、勘違いはやめなさい!」
「ふーん。じゃあ、別の男か。姉さん、つい最近まで『ジェイさまぁ!』とか言ってたじゃないか。それなのにすぐに他の男にうつつを抜かすなんて……。ずいぶんと薄情なんだな」
「なっ……!?」
言い返してやろうとしたけど、なぜか心臓がバクバクしてしまい、まったく言葉が出てこない……。
「へんっ! なんだよ、黙っちゃって。面白くない」
首をすくめたヘンリーは、そのままどこかへ行ってしまった。
「な、なによ……」
一人残された私。
とりあえず落ち着こうと、すっかり冷めた紅茶をぐびっと飲み干す。
(ジェイ様は私の手の届かない『彗星』なのよ! それにたった一度しかお話ししたことないし)
自分にそう言い聞かせた。
しかし直後に浮かんできたのは、その『たった一度』の出来事だった。
――大丈夫かい?
耳をくすぐった甘い声が脳内に響き渡る――。
落ち着いたはずの動悸が再び高鳴ってきた。
――頭をお上げください。謝らねばならぬのは、俺の方なのですから。
春の陽ざしのようなジェイ様の微笑が、白い光の中からふんわりと浮かんでくる。
するとその隣からジュスティーノ殿下の姿もまた浮かび上がってきた。
――いつの日か、僕と結婚してください。リアーヌ殿。
広い劇場の中を二人の看板俳優が共演しているかのように眩しい光景だ。
すると頭の中の二人が勝手に動きだしたのである。
――いかにジュスティーノ殿下と言えども、リアーヌは渡さない。
――何を言いますか、ジェイ大佐。僕の方がリアーヌを幸せにできます!
――リアーヌ。俺とジュスティーノ殿下。君はどちらを選ぶんだ?
――リアーヌ! 僕ですよね!
――いや、俺だよな。
ジェイ様とジュスティーノ殿下が私に迫ってくる――。
「むふふふ。選べなぁい」
ひとりでくねくねしながら悶絶する私。
きっとはたから見たら、ただの変態だわ。
でも人目など気にすることもなく、時間も忘れて妄想の世界に浸り続けていた。
「おーい! リアーヌ! 夕食の準備ができたぞー!!」
パパの大声でようやく現実世界に引き戻される。
気づけば太陽が西へ大きく傾き、空はオレンジ色に染まっているではないか……。
いったいどれくらいの時間、妄想の世界にいたのだろう……。
「はぁい! 今行きます!」
そう大きな声で返事を返した私はスキップしながらリビングの方へ向かっていった。
(ジュスティーノ殿下がお戻りになるまでは、毎日お二人のことを考えることにするわ! むふふふ!)
喪はあけているとはいえ、クローディア様に対して失礼かしら。
(でもきっとクローディア様なら、私が幸せそうにしていたら喜んでくださるはずだわ)
そう自分の都合のいいように解釈しながら、抑えきれない幸せをかみしめていたのだった。
しかし……。
まさか天国から地獄へと突き落とす大事件がすぐ目の前に迫っているだなんて――。
……
――僕たちが一緒になれば、きっとクローディア姉さんもお喜びになるはずです。それに顔を合わせる前から、あなたに憧れを抱いておりました。そして今、こうして実際にお話しして確信しました。あなたは素晴らしい女性であることを。だから僕が成人した後、僕のお嫁さんになって欲しいのです。
「うふふふふ……!」
クローディア様のお墓参りを終えて家に戻ってから、ずーっと笑いが抑えきれない。
だって第三皇子様から求婚されたんだから。
浮かれてしまうのは仕方ないと思うの。
しかも見た目はクローディア様そっくり。将来は美青年になること間違いなし。
そのうえ、性格は穏やかで優しいとくれば、もう言うことなしだわ。
――でも突然こんなことを言われても困りますよね。だから僕が戦場から戻ってきたらお返事をください。
ジュスティーノ殿下が戦場に戻ってくるのは1ヶ月先だとパパが教えてくれた。
そしてパパは同時にこう言ってたわ。
――ま、まあ。殿下がそうおっしゃるなら仕方ない……。あとはお前自身で決めなさい。
って。
だから殿下が帰ってくるまでにどう返事するか、しっかり考えておかなくちゃ。
でもちょっとでもジュスティーノ殿下のことを考えると、思わず顔がにやけちゃうのよね。
「うふふふ!」
そんな風に午後のひとときをバルコニーで紅茶とともに過ごしていると、弟のヘンリーがやってきた。
「なんで一人で笑ってるのさ!? 気持ち悪いなぁ」
ヘンリーの意地悪い挑発だ。
でも今の私には心地よい森のせせらぎのように聞こえる。
「あらっ? ヘンリーくん。ご機嫌うるわしゅう」
「うげぇ……。なんだよそれ……。その浮かれようからして、まさか誰かに愛の告白をされたとか?」
ズバリ言い当てられて、表情が固まり顔が熱くなってしまった。
ヘンリーは白い目をして続けた。
「マジかよ……。図星かよ……。こいつは驚いた。いったい相手は誰なんだ? ジェイ大佐か?」
「ば、馬鹿言わないの! ジェイ様なわけないでしょ! か、勘違いはやめなさい!」
「ふーん。じゃあ、別の男か。姉さん、つい最近まで『ジェイさまぁ!』とか言ってたじゃないか。それなのにすぐに他の男にうつつを抜かすなんて……。ずいぶんと薄情なんだな」
「なっ……!?」
言い返してやろうとしたけど、なぜか心臓がバクバクしてしまい、まったく言葉が出てこない……。
「へんっ! なんだよ、黙っちゃって。面白くない」
首をすくめたヘンリーは、そのままどこかへ行ってしまった。
「な、なによ……」
一人残された私。
とりあえず落ち着こうと、すっかり冷めた紅茶をぐびっと飲み干す。
(ジェイ様は私の手の届かない『彗星』なのよ! それにたった一度しかお話ししたことないし)
自分にそう言い聞かせた。
しかし直後に浮かんできたのは、その『たった一度』の出来事だった。
――大丈夫かい?
耳をくすぐった甘い声が脳内に響き渡る――。
落ち着いたはずの動悸が再び高鳴ってきた。
――頭をお上げください。謝らねばならぬのは、俺の方なのですから。
春の陽ざしのようなジェイ様の微笑が、白い光の中からふんわりと浮かんでくる。
するとその隣からジュスティーノ殿下の姿もまた浮かび上がってきた。
――いつの日か、僕と結婚してください。リアーヌ殿。
広い劇場の中を二人の看板俳優が共演しているかのように眩しい光景だ。
すると頭の中の二人が勝手に動きだしたのである。
――いかにジュスティーノ殿下と言えども、リアーヌは渡さない。
――何を言いますか、ジェイ大佐。僕の方がリアーヌを幸せにできます!
――リアーヌ。俺とジュスティーノ殿下。君はどちらを選ぶんだ?
――リアーヌ! 僕ですよね!
――いや、俺だよな。
ジェイ様とジュスティーノ殿下が私に迫ってくる――。
「むふふふ。選べなぁい」
ひとりでくねくねしながら悶絶する私。
きっとはたから見たら、ただの変態だわ。
でも人目など気にすることもなく、時間も忘れて妄想の世界に浸り続けていた。
「おーい! リアーヌ! 夕食の準備ができたぞー!!」
パパの大声でようやく現実世界に引き戻される。
気づけば太陽が西へ大きく傾き、空はオレンジ色に染まっているではないか……。
いったいどれくらいの時間、妄想の世界にいたのだろう……。
「はぁい! 今行きます!」
そう大きな声で返事を返した私はスキップしながらリビングの方へ向かっていった。
(ジュスティーノ殿下がお戻りになるまでは、毎日お二人のことを考えることにするわ! むふふふ!)
喪はあけているとはいえ、クローディア様に対して失礼かしら。
(でもきっとクローディア様なら、私が幸せそうにしていたら喜んでくださるはずだわ)
そう自分の都合のいいように解釈しながら、抑えきれない幸せをかみしめていたのだった。
しかし……。
まさか天国から地獄へと突き落とす大事件がすぐ目の前に迫っているだなんて――。