アイスクリームと雪景色
コップの底に目を落とし、僅かに残った液体が冷めていくのを、じっと見つめた。

ちょっと残念?

ふとそんな考えが過ぎり、美帆は慌てて首を横に振る。

「そんなわけないでしょ」

口に出して否定すると、残りをぐいっと飲み干し、紙コップ専用のゴミ箱に放り込んだ。

確かに、こんなふうに自分を楽にさせてくれたのは里村だと美帆は思う。少々荒っぽいが、失恋でぐずっていた気分を一掃し、前向きに切り替えてもらったのは事実だから、その点は感謝してる。

「荒っぽいと言うか……うーん」

『慰めたいんです、成田さんを』

思わず知らずどきっとする胸を押さえ、動揺する。

あんな効果的な台詞をさらりと口にするとは、やはり里村は、異性関係では経験豊富な自信家だ。女の子の扱いに慣れている証拠だろう。

「要するに、チャラ男くんってことよ、うん」

里村が美帆にひと目惚れして、当初からじりじりと近付き、狙っていたのは間違いない。

でも、やっぱり幻想なのだ。

雪のように、いずれ融けてしまうような、一時の感情である。
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