アイスクリームと雪景色
これまで付き合ったことのない、珍しいタイプの年上女を目標に定め、直感的に計画を組み立てる才能を駆使して、自分のものにしたら気が済む。

嘘のように冷めて、捨てる。

今は本気だとしても、それは幻想だ。

それなのに、甘い香りにときめいてしまったのはどういうことだろう。

「新しい靴を買いに行かなくちゃ」

紙コップが山になって重なるゴミ箱を見やり、美帆は自分に言い聞かせた。
 

オフィスに戻ろうとして休憩室のドアを開けたところに、人が入って来た。勢いよく踏み込んできたので、美帆は小さな悲鳴を上げる。

「お、すまん」

「は……箱崎さん」

グループリーダーの箱崎だった。

彼が休憩室に来るのは珍しいことで、二重に驚いてしまう。

「戻るのか?」

「はい。まだ仕事が残っていますので」

箱崎はシルバーフレームの眼鏡の位置を指で直すと、「そうか」と呟くように言ったが、少し迷った後で美帆を引き止めた。

「何かあったんですか?」

二人きりでないと話せないような重大なミスでもあっただろうかと訝り、美帆は開いているドアを閉めた。
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