アイスクリームと雪景色
それは、旅行先を指定するリーフレットだった。

「懐かしいふるさとがあなたを癒やします。ぬくもりの湯……上谷村(かみやむら)温泉……!?」


美帆は血眼になって里村を探した。

退社チェックはしておらず、建物から出ていないのは確かなのだ。それなのに、どこにも姿がない。一番怪しいのは男子トイレだが、さすがに覗くわけにはいかず、あきらめた。

オフィスに戻ると金本課長はとっくに引き揚げ、話を聞いたであろう箱崎が複雑な表情で待っていた。

美帆は急いで上司の前に走り寄った。こんなこと認めるわけがない。常識人である箱崎なら断ってくれただろう。

だが、彼の返事は期待を裏切るものだった。

「金本さんから話は聞いた。成田も忙しいだろうが、仕事のほうは俺がフォローするから頑張ってくれ」

「は、箱崎さん? それって、幹事をやれってことですか?」
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