アイスクリームと雪景色
(勢いでここまで来てしまったけど……本当に、いるのかしら)

活動的な開発部に比べると、ここは静かすぎる。美帆にとって、息が苦しくなりそうに居心地の悪い場所に思えた。

ここにいると確信したのに、その自信も揺らいでくる。言ってやるべきこと、訊きたいこと、何もかも頭から消失しそうだった。

受付で電話の応対をしながらPCを操作している女性が手を休め、こちらを向いた。美帆を映す目が、驚いたように見開かれる。
 
(やはり、あいつはここにいる)

内心ほっとするが、笑みを浮かべて立ち上がる秘書の視線には隙がなく、油断できない。それは敵視と言い換えても良いだろう。なぜかは分かっている。

ルナといい、女というのは、なぜこうも同性に対して厳しいのだろう。異性には……とりわけ気に入った男には、甘すぎるほど甘くなるのに。
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