アイスクリームと雪景色
いや、絶対に笑っている――

デスク上にライトのリモコンを見つけると、美帆は乱暴にスイッチを叩いて明かりを点けた。なぜ最初からこうしなかったのか。

まやかしの演出に、いつの間にか嵌っていた。
 
「さっすが、成田先輩。よく分かりましたね」

里村宏道は笑っていた。

罪の意識も気まずさもなく、ただニコニコと。

明るくなった部屋の中、美帆を見上げる彼の雰囲気はいつもどおりの軽やかさだ。さっきまでの、威厳に満ちたシルエットは消え去っていた。

「里村くん」

彼は笑みを収めた。

椅子からぱっと立ち上がると、デスクを回り込み、美帆の前に進み出る。

「里村くん、あなたって人は……」

「すみませんでした!」

いきなり頭を下げられ、美帆はまたしても気勢を殺がれる。

もう分かっている。このタイミングは計算だ。いや、彼の中に備わっている勝負勘と言ったほうがいい。

美帆はため息をついた。まともな説教をしても聞きはしないだろう。
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