アイスクリームと雪景色
日程がクリスマスというのが気になるが、行ってもいいと思っている。

だけど、このまますんなり許すのは、里村のためにならない。

「いいわよ、社員旅行に行きましょう。ただし、旅行日程の組み立ても、宿の予約も、バスの手配も里村くんの仕事よ。私のサポートをするなら、それくらいやってもらうわ。それから……」

美帆は一旦言葉を切ると、語気を強くした。

「他の皆に、余計なことを絶対に喋らないで」

里村が男として美帆に迫っているなど、誰にも知られたくない。特に箱崎には。

会長が公私混同を許しても、先輩はそうはいかないと教えてやらねば。里村を甘やかさず、一人前に育てるのが美帆の役目である。

仕事中よりずっと厳しい顔で命令した。

だが里村は理解したのかどうか、嬉しさいっぱいの笑顔を広げている。

「はいっ、大丈夫です。誰にも言いません。俺と成田先輩二人だけの秘密ですね!」

(そ、そうじゃなくって)

美帆は脱力し、その場に倒れそうになるが、かろうじてこらえる。

照れ笑いする里村を見ながら、靴を新調してよかったと、心から思うのだった。
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