アイスクリームと雪景色
特に産業もない小さな町。この堤防を、母が自転車に乗ってパートに通っていたなと思い出す。父の薄給を補うために、晴れの日も、雨の日も、雪の降る寒い日も、隣町まで働きに行っていた。

美帆は立ち止まり、なんとなく空を見上げる。そんな忙しい日々だから、家族旅行なんて一度行ったくらいのものだ。

(私がまだ小さい頃。こんなふうに雪が降ってたっけ。あれはどこだったのか……)

旅行先を思い出そうとするが、わからない。

実家への道を再び歩き出した。


「お帰り、美帆。早かったねえ」

実家に着くと、母が既に出かける準備をしていた。

「昨夜電話をもらって、びっくりしたから。今朝は早く目が覚めたのよ」

「ごめんごめん、お母さんもうろたえちゃって。考えてみれば、美帆を呼ぶまでもなかったんだよ。入院って言ってもすぐに出てくるだろうし、荷物も少ないし」

美帆は母が持つ荷物を引き受けると、車庫にとめてある車に向かった。

「休憩してから行くかい?」

「大丈夫」
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