アイスクリームと雪景色
美帆が病室を覗くと、父は点滴の針を刺してベッドに横たわり、目をつむっていた。ベッド脇に近付くと薄目を開けて、「おう」と声を出した。

「大丈夫?」

父は頷くと、笑みを浮かべた。

病気のせいか、お盆に会った時よりも痩せて、全体的に白っぽい肌色に見える。

(なんだか、急に老けたような)

年金を受け取る年齢であれば、世間的には老人の域だ。それにしても、たった半年会わないうちに、ずいぶん年を取った気がする。

仕事に対してルーズで、出世することもなく定年にいたった。金銭面でも母に苦労をかけてきた父は、美帆の反面教師である。

だけどそんな過去とは関係なく、ただ弱々しく横たわる姿に、同情心が湧くばかりだった。

「お父さん、美帆が朝イチで来てくれたよ。東京から2時間もかかるのに」

「たったの2時間よ」

母の大袈裟な言い方が照れくさい。

美帆は運んできた荷物をさっさと整理して、看護師に必要なものを預けた。回診に来た医師に挨拶し、予想より回復が早いと聞いて安心した。
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