アイスクリームと雪景色
帰る前に、院内の喫茶コーナーに立ち寄ることにした。

美帆は母と向かい合って座り、コーヒーをふたつ頼んだ。窓の外は、まだ雪が降り続いている。

「今年の冬は、雪が多そうだね」

美帆が呟くと、母親はしばらく黙っていたが、ふと思い出したように言った。

「そういえば、こんな季節だったねえ。家族旅行に出かけたのって」 

「えっ」

今朝、駅から実家へと歩く途中、美帆も頭に浮かべたことだ。

「そうよね。ほとんど記憶にないけど、雪が降ってた気がする」

コーヒーが運ばれてきた。湯気とともに良い香りが立ちのぼり、美帆はとりあえずひと口含む。

「そうそう。美帆が保育園の年少組の頃だよ」

「年少組……てことは、4歳になったばかりか」

なるほど、記憶が曖昧になるはずだと納得する。

「保育園のお友達から、クリスマスやお正月には家族で遊びに行くって話を聞いて、お父さんにねだったんだよ。うちはめったに出かけないから、美帆がうらやましがってねえ」

「そ、そうだったかな」
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