アイスクリームと雪景色
(で、結局心配かけてるのが、お父さんらしいというか……)

父の本意に気付いた美帆は、少し落ち込む。この年になるまで、父の気持ちを想像すらできなかったのかと。

口をつぐんでいると、母が気を取り直すかのように元気な声を出した。

「久しぶりに旅行の写真でも見てみようか。まだ時間あるでしょ?」

「う、うん。明日は日曜だし、大丈夫だけど」

「お昼ご飯を用意するから、ゆっくりしていきなさいよ」

やっぱり親は何でも見抜いてしまうのだなと、降参する。いくつになっても子供は子供で、父親にとってもそうなのだ。きっと――

「分かった、ゆっくりしていく。ところで、その旅行って、どこに行ったんだっけ」

温泉だったような気がするが、はっきりしない。

「ええとね……そうそう、上谷村温泉っていうところ。岐阜の、とにかく山の中だったねえ」

堤防道路で、トラックとすれ違う。

路肩にハンドルを取られそうになり、美帆は冷や汗を垂らした。
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