アイスクリームと雪景色
実家は5年前にリフォームしたが、それ以外は美帆が住んでいた頃と変わっていない。我が家独特の匂いがする居間に入ると、こたつが敷いてあった。

「今年は寒いからね、11月に出したんだよ」

母がストーブの火を点けながら、美帆に説明する。燃焼する匂いが冬らしくて懐かしい。

「さてと、病院でコーヒー飲んできたけど、お喋りして喉が渇いたわ。お茶でも淹れようか」

「あ、私がやる」

美帆が引き受けると、母は座敷に移動し、戻った時は手にアルバムを抱えていた。

「押入れの奥にあったよ」

変形サイズの絵本といった感じのミニアルバムだ。写真店のロゴが入った表紙に覚えがあるが、中身はどんなだったか忘れている。

例の家族旅行の写真が収まっているらしい。

美帆はアルバムを気にしながら、東京駅で買ってきた最中を出して、お茶を淹れた。アルバムを開いた母の隣に座り、そっと覗き込む。

「ほらほら、これだよ。旅行の写真」

「へえ……」

色あせた写真が、1ページに3枚ずつ丁寧に貼られている。
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