アイスクリームと雪景色
「これ、お父さんが?」

「そう。確かあの時、24枚撮りフィルムを2本も使い切ったのよ。写真なんて滅多に撮らない人なのにね」

それは珍しいと美帆は思った。

成田家では、記念写真の撮影は母が担当している。写真の整理も母がこまめに行っており、分厚くて立派なアルバムが居間の書棚に並んでいる。

これは、父が唯一こしらえたアルバムなのだ。

一枚一枚丁寧に貼られた写真を順番に追っていく。

幼い頃の自分を見るのは久しぶりだった。兄とお揃いのコートを着て、毛糸の帽子を被っている。両親も当然ながら若く、服装や髪型がなんだかお洒落で、今とは別人のよう。

(お母さん、スマートだったんだ。お父さんも、髪の毛がふさふさ)

かつての両親の姿に新鮮な感動を覚えつつ、ページをめくる。

ゆるやかな坂道。昭和の建物が軒を連ねるのはメインストリートだろう。観光客の姿が意外に多い。

確かにここは、あの温泉地のようだ。旅行会社のポスターで見た町並みと雰囲気が似ている。

(違う、似てるんじゃない)
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