アイスクリームと雪景色
雪の山々が背後に迫り、灰色の空が広がっている。

双児峰(そうじほう)が作り出す、特徴的な山脈の曲線。旅行店のポスターでは露天風呂の背景に使われていたが、この温泉地のどの場所からも望むことができるのだろう。

(本当に、あの上谷村温泉なのね)
 
不思議な偶然に驚きながら、さらにページをめくる。

どの写真の美帆も、笑顔いっぱいでとても楽しそうだ。子供の頃とはいえ、こんなにも表情豊かで無邪気だったなんて、我ながら信じられない。

「可愛いねえ。お兄ちゃんも美帆も、バスを降りたとたん雪遊びに夢中になっちゃって、なかなか宿に辿り着かなかったわ」

「そ、そうなんだ」

「どこもかしこも、雪、雪、雪。これまで見たことのないような、見事な雪景色だったからねえ」

山に囲まれた上谷村は雪が多い土地なのだ。

そういえば、旅行会社の人が近くにスキー場があると言っていたなと、美帆は思い出す。温泉街から、スキー場行きのシャトルバスが出ているらしい。

里村は『時間があればやってみますか』と美帆に提案したが、やめておくことにした。第二グループのメンバーは全体的に運動音痴なのだ。

参加するとしたら、里村の他は、箱崎と美帆くらいだろう。
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