アイスクリームと雪景色
そんなことを考えながら写真を見ると、スキーウエアを着た観光客が目に付く。上谷村はただの温泉街ではなく、当時からスキー観光が盛んだったわけだ。

旅行2日目の写真へと移り、しばらく眺めるうちに美帆はあることに気付いた。

「ねえ、お母さん。この人って……」

どの写真にも、ある特定の“見知らぬ人物”が写っているのだ。

背が高く、スマートな中年男性。ハンチング帽を被り、カジュアルだが上質そうなコートを着ている。大ぶりのサングラスのせいで顔立ちが分からないが、嬉しそうに笑っている。歯並びの良い、大きな口である。

最初の数枚は偶然かと思ったが、家族の背後や横から顔を出し、ピースサインでカメラ目線が10枚以上続くのは不自然だ。

明らかに、わざと乱入している。

それどころか、最後のほうなど中央に陣取って両親と肩を組んだり、美帆や兄と手を繋いだり、まるで家族の一員のよう。

一体、何者なんだろう。
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