アイスクリームと雪景色
最初のきっかけは、旅行会社のポスターだ。彼はポスターを指差し、嬉々として叫んだ。

――ここですよ、ここ!
――だって、せっかく見つけたんですよ
――俺は成田さんと、ここに、一緒に行きたいんですッ

適当な口実だとあの時は思ったけれど、それにしてはあまりにも熱心だった。外山会長のアイスクリームの話と関係あるのだろうか。
 
でも、それならそうと、最初から言えばいいのに。

「分からないわ、やっぱり」

「何が?」

いつの間にか、頬杖をついて考え込んでいた。

母に覗き込まれ、なぜかとても焦り、うろたえてしまう。

「な、何でもない」

「美帆、あんた疲れてるんじゃ……」

「大丈夫、大丈夫。あっ、お昼ごはん作るなら手伝うから。買い物に行って来ようか?」

悟られまいとして、母から視線を逸らす。

しかし、何を悟られまいとするのか、美帆自身にも分からないのだった。
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