アイスクリームと雪景色
「そういえば、あんたの後輩の里村さんって、面白そうな人だね。一度、家に連れて来なさいよ」

夜になり、駅のホームまで見送ってくれた母が、自販機で買った飲み物を手渡しながら言った。美帆はきょとんとして受け取り、発言の意味にびっくりする。

「とんでもない!」

「どうして。美帆が面倒見てる会社の後輩なんだろう? 別にいいじゃないの」

「それはまあ、そうだけど。あの子はその……面白いっていうよりも」

病室で里村について両親に話した。父を元気付けるために多少脚色したのだが、それを“面白い”と感じたらしい。

「っていうよりも?」

「うーん」

説明のしようがなく、困ってしまう。

ホームに電車到着のアナウンスが流れ、待合室から数人の乗客が出て来た。寒そうに背中を丸める若いサラリーマンを目で追いつつ、美帆は端的に答えた。

「ちょっと、変ってるのよ」

母は首をひねった。どんなふうに変っているのか、見当もつかない様子だ。

病室では、込み入った部分は避けて話した。もちろんそれは、里村が男として美帆に迫っていることだ。
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