アイスクリームと雪景色
美帆は病床の父を思った。弱々しく横たわる姿に同情心が湧いたけれど、あの人は今、幸せなのかもしれない。母にポンポン言われても嬉しそうにして、娘の話に耳を傾け満足そうに笑った。

理想の人生なんて、計画どおりに得られるものではないのだ。
 
(でも、こんなふうに考えられるのは、失恋したからよね。あのまま上手くいってたら、父を見直すこともなかった気がする。必要な経験だったんだわ、きっと)


――大丈夫ですよ、先輩


美帆の耳に、明るい声が聞こえた。

思わずホームを見回すが、彼がいるわけがない。

でも、確かに聞こえたのだ。


――後悔したことを、これからの人生に還元すればいい。反省したら、次は前進あるのみです!


今、彼の言葉が胸に沁みわたる。

美帆は、身体じゅうに力が漲るのを感じた。
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