アイスクリームと雪景色
座席に腰掛けると、ぼんやりと車窓を見やった。真っ暗だけど、これも懐かしい故郷の景色である。

――あまりにも生き生きとしてたから、もしかしてと想像したんだよ

――坂崎さんの話は出ないし、変化があったのかなって

コートのポケットからしるこドリンクの缶を取り出し、軽く振ってからプルトップを開ける。ひと口飲むと、温かな甘みがじんわりと広がった。

(そんなばかなこと、あるわけないじゃない!)

母の思い込みを、ため息とともに否定した。

三十路を迎えた娘の行く末を案じるあまり、突飛もない発想をしたのだ。七つも年下の後輩相手に、そんなばかなこと。でも……

美帆は、客観的に考える。

生き生きとして――というのは、実際にそうなのだ。普段から、箱崎や同僚にも言われることである。

(確かに、元気になるわね。里村くんと付き合ってると)

ドリンクを飲みきると、美帆は座席に身を預けて、目を閉じた。

甘い甘い後味は、熱に融けたアイスクリームのようだと思いながら。
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