アイスクリームと雪景色
(白髪頭で、黒縁眼鏡をかけていて、髭をたくわえている。あの年代には珍しく、ひょろっと背が高くて……そういえば、洒落たスーツをいつも着こなしていたような)
後ろから追い抜いてきた社員の肩がぶつかり、階段を踏み外しそうになった。
「きゃあっ」
「成田先輩!」
里村が支えてくれたので助かったが、危うく転げ落ちるところだった。
肩をぶつけた社員は里村の声にびっくりしたように振り返り、上から見下ろしてきた。その顔を確かめ、美帆は一瞬身体を強張らせる。
広報部の氷川ルナだった。
「ごめんなさあーい。私、早くオフィスに戻らなきゃと思って、慌てちゃってえ」
ルナは階段を下りてきて美帆と里村の前に立つと、唇から舌を覗かせた。ちっとも悪びれない態度に美帆はムッとするが、後輩の手前なので冷静に対応する。
「大丈夫でしたあ?」
いつにもまして舌足らずな口調で謝ってくる。しかも彼女の視線は美帆ではなく、里村に注がれていた。
間近で見るルナのメイクが以前より派手になっていることに気付き、美帆は違和感を覚える。赤みの強い口紅は、坂崎の好みではない。
後ろから追い抜いてきた社員の肩がぶつかり、階段を踏み外しそうになった。
「きゃあっ」
「成田先輩!」
里村が支えてくれたので助かったが、危うく転げ落ちるところだった。
肩をぶつけた社員は里村の声にびっくりしたように振り返り、上から見下ろしてきた。その顔を確かめ、美帆は一瞬身体を強張らせる。
広報部の氷川ルナだった。
「ごめんなさあーい。私、早くオフィスに戻らなきゃと思って、慌てちゃってえ」
ルナは階段を下りてきて美帆と里村の前に立つと、唇から舌を覗かせた。ちっとも悪びれない態度に美帆はムッとするが、後輩の手前なので冷静に対応する。
「大丈夫でしたあ?」
いつにもまして舌足らずな口調で謝ってくる。しかも彼女の視線は美帆ではなく、里村に注がれていた。
間近で見るルナのメイクが以前より派手になっていることに気付き、美帆は違和感を覚える。赤みの強い口紅は、坂崎の好みではない。