アイスクリームと雪景色
美帆はウッと言葉に詰まる。それでは、私と同じではないか。

だが里村は、楽しみすぎて眠れないと言った。美帆の場合は幹事としての、責任の重圧で眠れないのだ。根本的なところが違う。

「眠りなさい。目を閉じてじっとしてたら眠ってしまうわ」

我ながら無茶だが、他にアドバイスのしようがない。羊を百匹数えろ、温かいミルクを飲め、なんて、大の男にすすめる方法ではない。

それにしても、なぜ美帆のところに電話をかけてくるのか。

『……成田さん』

美帆はハッとする。

気のせいか、甘ったるいような、妙に感情がこもった呼びかけだ。

『成田さん、聞いてますか』

「き、聞いてるわ」

『俺、眠れなくて。でも、成田さんの声を聞けば眠れそうな気がして、電話したんです』

甘えたことを言っている。

というか、仕事以外の用事で里村と電話したことがないので、耳がこそばゆい。

(……ったく、しょうがないなあ)

電話の相手になることを決めた。日頃から里村には悩まされるが、それ以上に助けてもらっている。お返しのつもりで付き合おう。
 
「それじゃ、少し話しましょうか」
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