アイスクリームと雪景色
もし彼が相手だったら、当然のように仕事の話を優先するだろう。

(ああ~、ダメダメ)

元カレついでにルナを連想しそうになり、美帆は頭を振る。

(彼女のことは考えたくない。そうだ、社員旅行の間はあの子と顔を合わせずに済むわ)

――広報部には関係のない場所ですよ。

エレベーターでのやり取りを思い出す。ルナが旅行の行き先を追及してきたが、里村が突き放してくれた。

『お待たせしました。まずは明日の予定からですね』

元気のいい声が耳に飛び込んでくる。ルナのことなど、一瞬で吹き飛んでしまった。

『どうかしましたか?』

「ううん、なんでも。えっと、明日の予定からね」

眠れない夜、里村と会話する。

彼の入社当時からは考えられない状況だ。

不思議だけれど、気分が浮き立ってくる。このまま上昇して、いい気持ちになって、ぐっすり眠れそう。

美帆はすっかり安心して、彼の声に耳を傾けた。
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