アイスクリームと雪景色
「そうね……特に産業もない町だけど、子どもの遊び場所はたくさんあったわ。小さな山がぽこぽことあって、川が流れて、畑や田んぼもあって、要するに田舎かな」

『へえ、いいですね。山で遊んだりしたんですか?』

「うん。夏は虫を捕ったり、池でメダカをすくったり、ザリガニ釣りもしたわよ。冬は何してたかなあ」

美帆は子どもの頃の話をしながら、あることを思い出した。

「そうだ。つい最近、実家に帰ったんだけど、びっくりしたことがあるの」

『えっ、なんですか?』

美帆は、子どもの頃に家族で上谷村温泉に旅行したことを話した。里村に言おうとして、すっかり忘れていたのだ。

「それでね、私を気に入ったっていう変なおじさんがついてきて、家族写真に乱入してるの。ハンチング帽を目深に被って、大きなサングラスをかけてるでしょ。いかにも怪しい人だったわ。変質者だったらどうするのって、親に怒ったんだけど」

『……』

里村はなぜか、黙ってしまった。
< 213 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop