アイスクリームと雪景色
「もしもし?」

『あ、はい。すみません』

「どうかしたの?」

『なんでもないっス。大丈夫です!』

「?」

ちょっと様子がおかしい。

眠いならもう寝なさいと美帆が言うと、彼は慌てて喋りだした。

『確かに怪しいおじさんですね。でも、気持ちは分かりますよ』

「おじさんの気持ちが?」

『はい。だって、成田さんのことを雪の姫さんって言ったんでしょう? 俺もそう思いますもん』

雪の姫さん――?

美帆は首をひねる。さっき、そのことを話しただろうか?

『どうかしましたか?』

「あ、ううん」

いつの間にか口にしたらしい。

そうでなければ、『雪の姫さん』なんて言葉を里村が知るはずもない。

『家族旅行といえば、俺が子どもの頃に……』

里村が話題を変えたので、美帆も頭を切り替える。だんだん眠くなってきたので、小さな疑問はすぐに消え去ってしまう。
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