アイスクリームと雪景色
今さら気付いた事実に愕然とするが、里村はそんな美帆の衝撃など知りもせず、いかにもウキウキした様子だ。まるで遠足に出かける小学生そのもの。

昨夜感じた、“可愛い”という感情が蘇ってくる。

(“可愛い”と感じるのは、私にとって里村くんが、やっぱり“男の子”だからよ。そうよ、おばさんっぽい格好でも、誰も気にしない。第一、今日は社員旅行でデートじゃないんだから……)

美帆は開発部の面々を思い浮かべる。家族同然の男達の前で洒落めかしても仕方ない。もちろん、里村にはなおのこと普段着のままで十分だ。

時々こちらを向いてにこにこする里村に、ちゃんと前を向きなさいと注意する。まさに大人と子どもの関係だ。

しかし美帆は、なぜこんなにそわそわするのか謎だった。

謎の心情を抱えたまま、車に揺られた。
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