アイスクリームと雪景色
美帆はいたたまれなくなるが、里村の元気な声が、気まずい空気を一掃した。

「宿まであと2時間ちょっとです。皆さん、宴会の前哨戦にカラオケなんてどうです? 澤田(さわだ)さん、一発目やっちゃってください!」

「えっ、俺ー?」

カラオケ好きのメンバーが指名されて、周囲がはやし立てた。

「適任だな。ほら、マイクだ」

箱崎に急かされ、澤田は焦りながらも選曲し、カラオケ前哨戦の先陣を切った。

バス内はあっと言う間に盛り上がり、さっきまでの気まずさなど微塵も感じない。美帆はほうっと胸を撫で下ろすと、里村に笑いかけた。

「いろいろ、ありがとうね」

里村は手拍子を打つのを止め、元気なく首を振った。

「俺の、今までの対応が悪かったんです。氷川ルナに対して強気に出たのは失敗でした。ほんとに、すみません」 

「どういうこと?」

里村は真剣な顔になると、美帆に身体を寄せ、済まなそうに言った。

「あのタイプには、もっと下手に出るべきでした。無視したり、突き放せばムキになると分っていたのに。でも、成田さんを悲しませた原因だと思うと、つい、憎たらしいって言うか……」
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