アイスクリームと雪景色
美帆は車窓を眺めながら、隣にいる男を強く意識している。

意識せざるを得なかった。

どうしてあんなことをしてしまったのだろう――

里村のあまりにも真剣な眼差しと、守るという言葉に、つい絆された。雰囲気に流され、キスを許してしまったことを美帆は後悔している。

彼はすっかりその気になって、今にも抱きしめんばかりに美帆へと迫り、熱意を伝え続けている。

「あの、里村くん」

「はいッ」

「その……もう少し、離れてくれると、ありがたいんだけど」

ぴたりとくっついてくる身体をやんわり押し返すと、里村は心外な顔つきになる。

「でも」

俺と成田さんは……と、彼の潤んだ瞳が問いかける。ただの先輩後輩ではなく、『ただならぬ仲』だと言いたいのだ。

飼い主の愛情を求める犬のような、その一生懸命な訴えを美帆は無視する。後ろの座席には箱崎がいるのだ。これ以上密着を続けたら、変に思われてしまう。
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