アイスクリームと雪景色
「幹事さん。スキー場へのシャトルバスはここから出ます。一時間に二本、夜7時までの運行ですが、シーズン中の駐車場は混みますから、自家用車より便利なんですよ」

運転手に言われて見ると、ロータリーと広場がある。バス停の後ろには観光案内所があり、食事処や土産屋が集まっている。どうやらここは、上谷村温泉の中心地らしい。

「リフトで上まで行くと、雪質がいいですよ。眺めも最高だし、若者に人気のスポットです」

運転手はスキーが趣味のようで、嬉しそうにすすめてくる。雪質がいいからスキー客が多いのだなと、美帆は納得した。

「時間があれば行きたいですね!」

運転手の話に興味を引かれたのか、里村がにこにこしながら美帆を誘った。それはもちろん、『二人きりで』という意味だろう。

しかし美帆は、同じ答えを返すしかない。

「駄目。そんな暇はありません」

本当はフリータイムに余裕があるのだが、美帆に余裕がなかった。

「ええ~? せっかく運転手さんが教えてくれたのに」

「そ、そんなこと言っても……」
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