アイスクリームと雪景色
階数表示に目を戻すと、カゴは5階を通り過ぎて上階へと進んだ。下りてくるのを待つ間に男性社員が二人来たので挨拶を交わす。
「成田さん、お疲れ。今日は一人なの?」
彼らは飲料事業部の社員だが、同じフロアの顔見知りなので、里村のことをからかい口調で訊いてくる。
「ええ、まあ……ちょっと」
美帆は曖昧に濁した。
別に、目立つのが嫌で突き放したと、正直に答えても構わないのだ。誰もが納得するだろうから。
だけど、美帆はためらった。
――冷たい女だ
階数表示に集中する。
胸がどきどきしてきた。なぜ今、彼の言葉を思い出すのか。
(だって、仕方ないじゃない。里村くんがそばにいると、ペースが乱れて大変なんだから)
心の中で、独り言いわけする。それに呼応するように、彼の声が聞こえた。
――君はいつだって自分のペースでことを運ぼうとする
――人がよさそうで、実は他者に対して冷たい女だ
――もちろん、僕に対してもね
忘れたくても忘れられない。美帆を苦しめ続ける、彼の言葉たち。
「成田さん、お疲れ。今日は一人なの?」
彼らは飲料事業部の社員だが、同じフロアの顔見知りなので、里村のことをからかい口調で訊いてくる。
「ええ、まあ……ちょっと」
美帆は曖昧に濁した。
別に、目立つのが嫌で突き放したと、正直に答えても構わないのだ。誰もが納得するだろうから。
だけど、美帆はためらった。
――冷たい女だ
階数表示に集中する。
胸がどきどきしてきた。なぜ今、彼の言葉を思い出すのか。
(だって、仕方ないじゃない。里村くんがそばにいると、ペースが乱れて大変なんだから)
心の中で、独り言いわけする。それに呼応するように、彼の声が聞こえた。
――君はいつだって自分のペースでことを運ぼうとする
――人がよさそうで、実は他者に対して冷たい女だ
――もちろん、僕に対してもね
忘れたくても忘れられない。美帆を苦しめ続ける、彼の言葉たち。