アイスクリームと雪景色
美帆はすぐに湯船を出ようとしたが、その目に射られて足が動かない。ルナの罠に嵌ってしまったのだ。女湯には、里村は来ることができない。

「待ってたんですよ。さっきから、ずーっと」

よく見ると、ルナの顔も身体も赤く火照っている。一体、いつから露天風呂にいるのだろう。というより、その執念が何よりも恐ろしかった。

美帆が黙っているとルナは真顔になり、勝手に話し始める。他の入浴客がいるためか、攻撃的な目つきとは裏腹に親しげな口調で。

「あれから、織田ちゃんは帰ろうって言ったんですけど、私はどーしても逃げたくないんで、来ちゃいました。一人で雪道を飛ばしたんです。こう見えて車の運転が得意なんですよ」

雪道を一人で運転してきた?

美帆は驚くが、自慢げに語る彼女の様子に嘘は感じられない。意外な得意技だが、ルナなら出来るかもしれない。

「じゃあ、織田さんは……」

「サービスエリアに置き去りです。平気ですよ、彼氏に迎えに来るよう電話してましたから」
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